本共同研究の目的は、若者のシティズンシップがはらむ根源的共生可能性のダイナミックな包括モデルを構築するとともに、移民・土着性・帰属をめぐる若者の思想と実践のモードを二国間でクロスオーバーさせることによって、両国の若者が次世代に受け継ぐシティズンシップの未来形を提示することである。
- シティズンシップのフレキシビリティの焦点化する。
- シティズンシップ(ないし「より良きシティズンシップ」)を主張する、次世代のフロントランナーとしての若者の主体性に民族誌的関心を向け、変化する政治経済状況に流動的に対応しつつ、シティズンシップのトップダウン式の「成型」がボトムアップ式の「自己創出」(「自己のテクノロジー」)と接合される過程、すなわち、21世紀におけるシティズンシップのフレキシビリテ(Nyamnjoh,2012)を焦点化する点にある。
- 若者による公的な異議申し立てという非公式的な政治参加のトレンドに注目する。
- 1. 国民国家の共同幻想に由来するシティズンシップの法律政治体制の規定性と、それを無効化するヒエラルキー構造を批判的に検討する。
- 2. 日常的政治実践において多様に運用・創出されるシティズンシップの現実世界の動的概念へと分け入る。
- 3. 自己/他者にかかわる特定のカテゴリーに基づいて特定のシティズンシップを配分するトップダウン式の企図と集合的/個人的政治行動との二分法を乗り越える。
- 民族誌的なシティズンシップ研究を所収した論集(Langaa学術出版会)を出版する。
- 本共同研究の実施により、21世紀のシティズンシップにおける「理念と実際との緊張関係」への明敏な感覚を持ち、非暴力と対話を重んじながら、非公式的で能動的な政治参加を果たす「批判的市民」(Norris, 1999)の実践、ひいては広義の民主主義に関わる広域ネットワークを起動することが可能になる。