イスタンブールドキュメンタリー映像祭
柏本美智子
10月29日イスタンブールに到着、翌30日から11月4日まで、イスタンブール・ドキュメンタリーフィルム・フェスティバルに参加した。
この映画祭は、社会的記憶のギャップを埋め、イスタンブールの文化の継続性に貢献する目的で、イスタンブール・ドキュメンタリーフィルム作家協会(トルコ名BSB)により、1997年に始められたものである。今年度は世界30カ国余から約80本の作品が出品され、以下の7ジャンルに分類し上映された。
- BLACK SECTION: Stories about true life, war, violence, social depression and the people who experienced or resisted these times
- “Addicted in Afghanistan”, “My Letter to Pippa ”, “Cold Blood ” など15作品
- RED SECTION: The conditions of work and labor, workers and laborers in the world order. Filmmakers sometimes found them, sometimes they found film
- “At My Door Step”, “Resister”, “End of Waiting Time” など8作品
- ORANGE SECTION: Modern day stories about close or far geography
- “Coffee Futures”, “The Word or Death”, “Eyes Wide Open” など12作品
- YELLOW SECTION: Migrating. Being away from home. Not being able to return. Singing folksongs far from home through cinema.
- “ Leaving Behind”, “ Little Alien”, “ The Last Season” など7作品
- BLUE SECTION: Ordinary stories about extraordinary people, extraordinary stories about ordinary people.
- “Bagdad”, “The Call of The Mountain”, “A Two Day Fair” など11作品
- PURPLE SECTION: Geography, climate and society created future. People who feed on culture created art with their passion
- “Notes on The Other”, “Piano mania”, “Dreaming Films ” など11作品
- GREEN SECTION: Nature, people, cities. Films that struggle for a sustainable world.
- “Stop, Listen, Look”, “The Losers”, “Concrete Coast” など8作品
幸いなことに、ほぼ全ての作品に英語字幕スーパーがついていた。これらの作品の内、例えば『 Coffee Future 』は、コーヒーの残滓から占いをするというトルコのコーヒーカルチャーを題材に、参入を拒み続けるユーロ圏を積年の片思いの相手に見立てて、ヨーロッパとアジアの境界に位置するイスラム文化圏というこの国の立ち居地を描いた短編だった。コーヒーのようなほろ苦いテイストのユーモアに、会場から時折笑い声が上がった。
他に、旅行中にレイプされ殺害された女性を悼むため、同じ行程をヒッチハイクでたどるという設定で、トルコの地方の現状を描写した『 My Letter to Pippa 』や、ドイツのコンサートピアノ調律士を描いた『 Piano Mania 』など、深い印象を残す作品が沢山あった。しかしわずか数日間のスケジュールでは、鑑賞したいものを絞っても観られる作品はごく限られたもので、もどかしさが後に残った。
上映会場は、ミニシアター系映画館とゲーテ・インスティチュートの計4ヶ所、10人程度を収容する小さなものから100人程度の規模まで色々で、ボスボラス海峡をはさんで、アジア地区とヨーロッパ地区に分散していた。会場へのアクセス、会場案内や上映予定の表示は十分とは言えず、移動にも時間がかかった。全体としては質の高い映画祭で、ドキュメンタリーフィルム作成と公開の手法、また問題の表現方法やフェスティバルの運営などについて、認識を深めることができた。
この映像祭のサイト:http://www.1001belgesel.net/en/Default.asp